鳴り止め、心音
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「鬼男くん、ちゅーして」



「は?」




唐突に告げられた一言。そのたった一言に僕は愕然と振り向いた。仕事中に何言ってんだ、このイカ。おいでと言わんばかりに両手を広げてへらりと笑みを浮かべる上司に思わず眉を寄せる。




「仕事中ですよ」



「だって俺の仕事、終わったもん」



「いい歳したオッサンがもんとか使うな。きもい」




未だ終わらない書類の束と格闘中の僕は八つ当たりを兼ねていつもより数段辛辣な言葉を連ねる。案の定泣き真似を始めた大王から視線を逸らし数枚の書類をバインダーに挟み新たに目を通していく。やがて静まり返った室内に響く微かな物音。今迄騒いでいた大王の声がぴたりと止んだこともあり振り返ろうとした瞬間いきなり背後から視覚を奪われた。




「だーれだ」



「…いい加減にしないと本気で怒りますよ、大王」



「あ、俺だってわかるんだ。愛の力だね」




当たり前だ、この部屋には僕と大王の二人しかいないのだから。視覚を奪う大王の手を半ば無理矢理振り払い再び手元の書類に目を落とす。それでも余程暇なのか大王は僕の頭を撫でたり時にはその指先で唇に触れたりしてくる。正直、集中出来ない。ああ、もう…早く片付けたいのに。




「大王、いい加減離れて下さい」



「んー…鬼男くんからちゅーしてくれたらいいよ」



「っ、ふざけんな」




一度書類を捲る手を止め横目で睨むように見据える。それでも一向に離れることなくべたべたと無遠慮に触れてくる手、終いには角にまで触れようとする指先を慌てて制し振り返る。くそ、不本意だけど仕方ない。




「…一回だけですからね」




僕の言葉に些か顔ほころばせた大王が目を閉じる。その姿を確認した後、不覚にもどきどきと高鳴る鼓動をどうにか抑制しながら触れるだけの口付けをおとす。普段僕からする事も無いしましてや此処が執務室であるという事実からどうしようも無く羞恥が込み上げ直ぐ様唇を離した。あまりにも早い僕の行動に大王は少々不満らしく唇を尖らせ拗ねるような仕草をしている。…まったく、人の気もしらないで。




「ほら、仕事が片付いたなら自室に戻ってて下さい」



「えー…じゃあ後で鬼男くん、来てくれる?」



「…気が向いたら行きます」




待ってるね、とくすくす笑いながら執務室から退室する大王の背を見送る。やがて扉が閉まる音が反響し静寂が執務室を満たす中、ぷつりと緊張の糸が切れた僕はその場にへたり込んだ。熱を持ち火照った顔に未だばくばくと煩い心音。あーもう、鳴り止め!これじゃあ仕事なんか手につきやしない。



「…どうしてくれるんですか、大王」










(あ、やっと来た!遅いよ、鬼男くーん。そんなに仕事残ってたの?)

(…あ)

(あ?)

(あんたのせいだろ!この変態大王イカ!!)

(痛ぁあ!な、なんでーっ!?)






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仕事中にも関わらずセクハラしまくる閻魔、あると思います(^p^)←

今更ですが当サイトの閻魔は鬼男くん溺愛です∀

このまま続けると裏にいきそうだったので一旦区切りました((殴

続き、書こうかな。。←
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