1/1ﾍﾟｰｼﾞ目 ｢どったの、芭蕉さん。浮かない顔して｣ ｢…実はね｣ 机の向かい側には丁度遊びに来た、えっと正確にはサボりに来た閻魔くんが茶菓子を片手に何時間も居座ってる。いや、別にいいんだけどね。閻魔くんも大変な仕事してるから疲れてるみたいだし息抜きになればいいけど。 それに今、曽良くんと絶賛喧嘩中だから。 ｢喧嘩?いつもしてるじゃん｣ ｢あれは喧嘩のうちに入らないよ｣ ｢ねぇ、前から思ってたんだけど芭蕉さんて…М?｣ ｢ちょっ、違うから!真面目に聞いてよ!!｣ ｢あははー冗談だって。で、喧嘩の原因は?｣ 喧嘩の原因は本当に些細なこと、私が大切な人形マーフィーくんを抱いて寝ようとした瞬間曽良くんにいつまでこんな人形抱いて寝るつもりですか、といきなり奪われた。慌てて奪い返そうとマーフィーくんの片足を掴み引っ張り返すも瞬間聞こえたのはびりと布が裂ける音。見事に首もとから裂けた私の大切な人形を目の当たりにして曽良くんも唖然としていたような気がする。鬼弟子の普段通りの行動なのに眠気による苛立ちからその時私は珍しく声を荒げ本気で怒った。 ｢なんでこんなことするの!!｣ ｢芭蕉さ…っ｣ ｢曽良くんなんか大っ嫌い!!｣ 大人気なかったかな、私も。あの時はついカッとなって大嫌いなんて口走っちゃったけど本当はその逆、大好きなのに。それに首もとが裂けたのは無闇にマーフィーくんを引っ張り返した私にも責任があるし。とにかく…それ以来曽良くんは私の家にぱったりと訪れなくなった。旅に出てる間やこの芭蕉庵に戻ってからも大抵毎日会ってたから一週間も会えないのは流石に曽良くん不足。芭蕉死ぬよ、これ。 大まかな経緯を説明しながら机へぐったりとうなだれた。対する閻魔くんは特に深く考える素振りも見せず茶菓子を頬張りながら淡々と返答する。 ｢そりゃあ、百パーセント曽良が悪いでしょ｣ ｢そう…かな｣ ｢だけど、あいつ不器用だからさ。その人形に嫉妬でもしてたんじゃない?｣ ｢…嫉妬?｣ ｢うん。なんにせよわざとじゃないと思うけど｣ ｢判ってるよ、曽良くんとは誰よりも一緒に過ごしてるんだから｣ ｢…そ、ならいいけど｣ にへらと笑う閻魔くんの言葉のおかげで幾分か心が晴れた気がした。やっぱり彼には何か人にないものを感じる。 ｢さーてと、そろそろ帰ろうかな｣ ｢え、もう帰るの?｣ ｢黙って下界に来ちゃったから鬼男くんが怒ってるだろうし。…それに、邪魔者はとっとと退散したほうが身のためだからね｣ 意味深に告げられた言葉の意図を聞く前に彼の姿は室内から消えていた。変わりに響く戸の開く音。私は思わず其の場に勢い良く立ち上がり駆け出す。 ｢…ごめんください｣ 玄関へ向かうと共に視界へ捉えた曽良くんの姿。一週間前と何一つ変わらない其の姿に思わず安堵の息をつく。 ｢曽良くん…｣ ｢あの…お土産、です｣ ｢へ?｣ 不意に差し出された紙包みを受け取り、早々と中身を確認する。瞬間、包みから顔を出したのは私が旅先で気に入っていた羊羹と喧嘩の原因になった私の人形。え、でも…裂けてた首もとが縫い直されてる。 ｢曽良くん、これ｣ ｢…この間は、すみませんでした｣ 唐突に告げられた謝罪に思わず目を見張る。目の前に佇む曽良くんは心なしか顔を俯けていた。…そっか、曽良くんが縫って直してくれたんだ。その事実に緩む口元。 ｢ううん、気にしないでよ。私も怒鳴っちゃってごめんね｣ ｢…はい｣ 私の言葉に安堵したのか珍しく口元へ笑みを浮かべてる。なにこれ、なにこれ…めちゃくちゃ可愛いんですけど! ｢と、とりあえず上がってよ｣ ｢いえ、臭いんで帰ります｣ ｢ちょっ、今の流れでそれ!?｣ ｢冗談ですよ、遠慮なく上がらせてもらいます｣ 良かった、普段通りの曽良くんだ。いや、普段よりちょっと素直な曽良くんかな。あんな笑顔が見れるなら、たまには喧嘩もいいかもね。 ｢曽良くん｣ ｢…なんですか?｣ ｢ね、もう一回笑ってみて｣ ｢嫌ですけど｣ ｢えー…一回も二回も変わらないじゃない。お願い、曽良くん!｣ ｢いい加減しつこいですよ、芭蕉さん。断罪されたいんですか?｣ ｢あわびっっ!!!｣ たまには喧嘩でも (ただいま、鬼男くん!) (………………) (あれ、鬼男くん?) (………………) (おーい、お・に・お・く・ん) (……話し掛けないでくれませんか?この変態大王イカ) (え、なにその今までに見せたことの無い満面の笑顔…ってか可愛い、ぎゃああぁあ!!!) (っ、少しは反省しやがれ!!) -------------- 芭曽大好きです!← 喧嘩ネタ久々に書いてみました^^ もうちょっと曽良くんをデレさせたかったんですが、途中で力尽きました'`← ここまで読んで下さった方、ありがとうございます(^^) [指定ﾍﾟｰｼﾞを開く] ＜＜重要なお知らせ＞＞@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
友達に教える [編集] 無料ﾎｰﾑﾍﾟｰｼﾞ作成は@peps! |