小説

☆Twelve Amulet
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神石町。
地図上に載るその町の名の由来はまさに神の石が取れることからきた。
ただ、その存在は人間にはほど遠く恐れ多いものとされる。
そんな神石町に不穏な動きがたびたび見られた。



「あー久しぶりだー」

懐かしさに思わず声を発してしまった。
何せこの土地を踏むのは三年ぶりだったのだから。


朱里 瑠美奈(あけざとるみな)は中学校時代は父親の仕事で福岡で過ごしていた。
しかし今日、前住んでいた神石町に再び戻ってきたのだ。
高校生活の残りはこっちで過ごすことにしている。

「瑠美姉ちゃーん、そんなとこ突っ立ってないで引っ越しの片付け手伝ってよー」
弟の刃斗(やいと)が家から出てきて手招きをしていた。
でも手伝いと言ってもほとんどは業者がやってくれるので実際にやることは少ない。
だから瑠美奈は口を尖らせて言った。

「やだーめんどいじゃん。そんなもの親父たちに任せときなって」

父親は今家の中で業者と手続きについて話し込んでいた。
母親は…元々いない。

「ちょっと公園行ってくる」
手伝う気もさらさらない。
瑠美奈は刃斗を置いて駆け出した。

「あっちょっと、瑠美姉ァ」

弟が制止するのも聞かずに瑠美奈は走り続けた。
ー太陽が、暖かい。
三年前はこんなに暖かかっただろうか。
そして、彼女は変わらないだろうか。



公園では葉桜が生い茂っていた。
さすがに花の方はもう散ってしまっている。
人っ子一人いない寂しい公園。
瑠美奈は近くのブランコに腰をかけた。
公園の時計は四時前を指している。

…もうすぐ、来てもいいはずだ。

「…瑠美ちゃん??」

瑠美奈しかいなかったはずの公園に遠慮がちな声がした。
瑠美奈が顔をあげるとそこには旧友の古高 嵐(こごうらん)がいた。
まだ引っ越しをする前に仲の良かった親友であった。
こっちに来て最も会いたかった人物なので、あらかじめ呼んでおいたのだ。

「嵐ァご無沙汰對ッ伸びたね。なんか大人っぽくなった」

瑠美奈は楽しそうに言った。
正直、本当に来てくれるか不安だったので喜びもひとしおだった。

「そういう瑠美ちゃんは髪短くなったね。すごく似合うよ」

嵐は微笑んだ。
そういう笑い形も変わらない。

「でもまた瑠美ちゃんに会えるなんて思ってなかったなー。中二以来だよね??」
嵐も隣のブランコに腰をかけた。

長い、澄んだ色の髪がふわりと揺れる。

「だね。丁度冬くらいに転勤になっちゃったからさ」


何年も会っていなかったものの、絆は固いままだった。
こうして話をしていても全く違和感を感じない。昔と変わらない。瑠美奈はそう感じていた。

二人共お互いの話に夢中だった。
昔のこと、今のこと、未来のこと。
やがて、一時間が過ぎ、二時間が過ぎて辺りは一面夕暮れの暗さに包まれた。

始めに重い腰をあげたのは瑠美奈だった。


「いったたた…ずっと座ってたから腰が…。おばあちゃんみたいォもうちょっとここにいたかったけど時間も時間だし、帰るね」


立ち上がった瞬間、ブランコは急になくなった重みの反動で揺れ動いた。
それは時計の振り子のように僅かに揺れている。

「もう、行くの??」

「うん、刃斗に怒られるし。まあ今から行っても怒られそうだけど。それじゃ、高校でまた会おっか。先生言ってたけどクラス同じらしいし」

瑠美奈は嵐に背を向けて歩きだした。
しかし、嵐が瑠美奈の腕を掴む。
瑠美奈は突然のことにびくりと体を震わす。

「瑠美ちゃん」

瑠美奈の耳元で嵐は囁くように瑠美奈の名前を呼んだ。
吐息がかかった。

「ちょっ驚かせないでよォどうしたの??」

瑠美奈は困り顔で嵐を見た。
嵐は掴んだ瑠美奈の腕をそっと放す。
嵐は少し吃りながら言った。

「ううん、何でもないよ。じゃ、学校で」


瑠美奈は怪訝な顔をしつつも嵐に手をふった。

「うん、バイバイ」

嵐も瑠美奈がいなくなるまで手を振り続けた。

そして、公園には嵐一人だけとなった。
寂しげな顔をする嵐。


そこには瑠美奈が気がつかなかった、三年前との確かな違いがあった。
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