小説

☆Devil Heaven
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何故泣いているの




心の奥底で




虐げられた籠の鳥




あなたは全てを隠して





何故、泣いているの





何故





私 が あ な た を


守 っ て あ げ る











学校。

それは恐怖の対象以外何者でもなかった。

一人だけ離された机。

目を離した瞬間、なくなる私物。

でも僕は何も言わない。

何も言えない。

言えないんだ、弱いから。
今日もそうだった。



「よぉ、浦部。てめぇまだ生きてたのか、早く死ねよ」

いつものことだ。

同じ繰り返しにもう飽きた。

「何とか言えよゥこのクズゥ」


何でだろうね。

僕の頭から血が流れていく。

痛い。

やめてよ。

なんて、言えるはずもなくて。


「おい、そうだ。俺らこれからゲーセン行くんだけどよぉ、ほら。出せや」


木野くんは僕に手を出した。

別に交友的な意味じゃないのは僕にも分かりきっている。

それにしても、太い、醜い手だ。

僕は黙って木野くんの手にお札を一枚ちょこんと乗っけた。

その様子を見た木野くんはまた僕を殴ってきた。

「足りねぇだろうがゥこんなんでちみちみ時間稼げっていうのかィ頭悪いんだよ、虫けらゥゥ」


僕はうつむいてうなだれた。

別にお金がない訳じゃない。

この辺で止めとかないと他の人にも盗られたときにどうしようもなくなる。

そして、また醜い手で殴られた。

あげたのに、何度も何度も。

痛くてたまらない。

どうすることもできない。
僕は弱い人間だ。








放課後。

なんの思い入れもない学校だけど、僕は毎日教室の花に水をやってから帰宅する。

だって、花たちが悪い訳じゃないだろ??

誰も水をあげなかったから。

今にも枯れそうだったから。

いつしか水やりを始めたんだ。

それが僕の学校に通っている唯一の理由。

別に格好つけてる訳じゃないけどね。


今日もジョウロに水を入れて教室に戻ってくる。

今日はいつもと違った。

放課後の教室なんて誰もいやしないのに。

黒い服の女の人。



一人で歌っていた。



「何故泣いているの




心の奥底で




虐げられた籠の鳥」


誰かは知らないけど綺麗な声だ。

まるで吸い込まれていきそうなくらい。


「あなたは全てを隠して





何故、泣いているの」


何故だろうね。


「何故




………。


女の人がこちらを振り向いた。

無表情だ。

彼女の背中から黒い翼が生えた。

黒い羽が教室全体、そして僕を覆う。



「 わ
た し












て あ














僕は世界に堕ちていった。
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