2:《BABY BABY》



「ういーす」

早朝、やる気のない声が部室に響く。白髪頭をボリボリ書きながら、坂田銀時が入ってくる。

「ういーすじゃねェェェ!!!!!坂田ァァァァァァァァ!!!!!!」
一目見るなり、銀時に殴り掛かっていく土方。
眠た気な目を少し見開いて、銀時はそれをひょいとかわす。

「ちょっと朝から何いきなり、土方くん。銀さんびっくりしたじゃん。俺なんかした?」

「なんもしねえから怒ってんだよ。
お前、昨日帰ったろ。俺と近藤さんで9時までやってたんだよ準備!!!しかも練習来るの何日ぶりだよお前…」
土方は怒鳴る。

「…ふーん。ああ、入学式の準備ね。すっかり忘れてた。悪いね土方くん、サンキューゴリラ。」

「てめェェ!!!!ふざけんじゃねえェェェェェ!!!」
再び殴りかかる土方に、近藤が叫ぶ。

「おい!二人とも落ち着けって!!喧嘩はだめだ」
近藤にとめられ、土方は手を引っ込めた。

「それよりトシ、あれ、親御さんから聞いたか?」

「あ?」
話題を逸らされ、不満げに土方は返した。



「総悟、お前の家の隣に引っ越すことになったんだよ。」








は?







「俺も総悟一人じゃ心配だったんだよ。トシが一緒だったら安心だ。トシの親御さんも面倒見てくれるみたいだし。」

はあ?

「冗談じゃねーよ」











近藤から詳しく聞いた話だと、「沖田総悟」がいつまでも近藤に迷惑をかけたくないと、一人で暮らすと言って、家賃の安い所を探してたところ、土方の住んでいたマンションにたどり着いたと言う。



「おぃ、近藤さん。俺んちはそこまで格安物件じゃねーよ。」
土方が言う。

「大家さんがな、事情を話したら同情して、家賃タダにしてくれたんだよ。まあ、弟だと思って可愛がってやってよ」



ふざけんな。



冗談じゃねえよ。





俺はガキは嫌いなんだ。













家に帰ると、小さい引越しのトラックが停まっていた。
見ず知らずのガキが引っ越してこようと自分には関係ない。
土方は目も向けず階段を上がって行く。

階段を、一段あがった時、



「土方さん。」


聞き覚えのない声。
聞き覚えのないイントネーション。


「誰。」

振り返る。


「隣に引っ越してきた、
沖田。沖田、総悟でさぁ。」

栗色の頭のそれ。


「何とぞ、よろしくお願いしやす。」

にやり、笑った。

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