5:《SKOOL KILL》


「総悟」

「総悟、起きろ」
頬をつまんで引っ張るが反応はない。

「…ん。」

「学校行くぞ、起きろこの野郎。」

「眠い…」

「眠いじゃねえ。起きろ。」
布団をひっ剥がして、身体を揺すればやっと少し覚醒したらしい沖田と目が合う。

虚ろな目で時計を見て言う。
「まだ六時じゃないですかぃ。なんでぃこんな早くに。…あ。また不法侵入」
土方を指差した。

「うるせえ。やだったら鍵ぐらいしっかりかけやがれ。
7時から朝練だ。行くぞ。」

「え−…いやでぃ。俺はまだ正規の部員じゃないんでさあ。
それに、朝練なんて行ったら授業でなきゃいけねーじゃないですか!!!」

「何、お前初っ端から授業サボる気満々な訳。力強く言ってんじゃねーよ全く。
おら、着替えろって。」

あくまでも布団から動こうとしない沖田の、両腕を引っ張って立たせる。

「いだただだだだだ!!!腕もげるって馬鹿!」
悪態をつきながらも、楽しそうに足をばたつかせる。

「時間ねえよ。さっさと支度しろ。」

「へいへい。」
気怠い動作で、土方のお古のジャージに腕を通した。


大江戸高校は、このマンションから自転車で20分程で着く。
いざ行こうと、土方は愛車に跨がったが
「俺、チャリなんてないでさあ」
と沖田が口を尖らせた。

「歩いてたらもう間に合わねーよ。じゃあ後ろ乗れ。」

促せば荷台に乗ってきた。


まだ寒さが残る四月の朝。
人通りの少ない道を自転車で走る。

「ねぇ土方さん。」

「なんだよ。」

「ん。やっぱなんでもない。」

「…間に合わねえからとばすぞ。ちゃんとつかまっとけ」

そう言って裏道を猛スピードで駆け抜ける。

遅刻しそうなのは俺が原因なのに。

必死にペダルをこぐ隣人が、愛おしくて、ぎゅっとつかまる力を強くした。
その背中に、顔をうずめたら、ほのかに煙草の匂いがした。



「ありがとう」


絶対聞こえないように、小さな声で。










「土方、1分14秒ちこーく。主将にあるまじき行動ですな」
土方達が部室に駆け込むなり、銀時が言った。

「お前っ!!!なんで、今日に限って、早く、きてんだよ!」
肩で息をしながら苦しそうに土方が言った。

「時間守るなんて当たり前じゃん、人として」
銀時はちゃかすように軽蔑した目を向ける。

「お前だけには言われたくねーんだよ」

「酷いなあ。ってか後ろの子誰?…大串くんの隠し子?」

「な訳ねーだろ!!!っつーか誰だよ大串って!!!」
土方が叫ぶ。

「一年の沖田総悟でさぁ。宜しくお願いしやす」
沖田は前にでると軽く頭を下げた。

「へええ。可愛いね君。」
銀時はさらりと言った。

「いや、ああ。どうも。」
沖田が戸惑っていると

「総悟、こいつ無視していいから。」
土方がぴしゃりと言った。

「他に、多分もう自主練してるけど、桂と、学校すら来てねえが高杉って奴の全部で四人。高杉はこねえから実質三人だな、今」

「へえ。二年はいないんですかぃ?」

「…全員辞めたよ」
土方は罰が悪そうに呟いた。

「はっ、すげえな。あんた人望ないんですねぃ。廃部の危機じゃないですかぃ」
にやりと笑う。

「うるせえよ」
土方は不機嫌そうに返す。
そこへ、遅れて近藤が現れる。

「おはようございやす、近藤さん!!!」

人が変わったように沖田が背筋をピンと伸ばし深々と頭を下げた。
土方はその変化に少し驚いたが

そういやこいつ、近藤さんに面倒見て貰ってたんだっけ

などと思いながら豹変した沖田を見ていた。

「お−お−。総悟来てくれたか!!!昨日は心配したぞ!!!」
近藤が頭を撫でれば、嬉しそう。

「昨日はすいやせん…昨日行けなかったぶん、今日はどうしてもきたくて…朝練きちまいました…」

嘘ばっかしじゃねーか。俺が呼ばなきゃこいつ高校すら辞めようとしてたくせに。

と腹黒い隣人を睨んだ。





近藤の掛け声で全員が体育館に集まる。
簡単な基礎練をし終わった時、近藤が言う

「トシ、総悟の相手してみろ」

体育館が静まり、二人に視線が集まった。

「近藤さん、こいつはまだ新入生だぜ。いいのかよ。」

「いいんだ、いいから。鐘がなるまでだからもう後何分もねえが、やってみろ」
近藤は楽しそうに笑った。

土方は何か腑に落ちないまま
互いに礼をして、試合は始まった。



沖田の目つきが変わる。

強い。

油断を与える隙なんてなくて。

土方が護りの剣ならば
沖田は攻めの剣。

まずい。
押されてる。

一年坊に負けるものかと巻き返しをはかるが、隙がない。

銀時が、面白そうに口笛をひゅうと吹き
「土方くん押されてんなあ」
と笑った。

桂は黙って腕を組み、見ていた。

やばい。

そう思った時。
鐘がなり、近藤が沖田の腕を掴んだ。
「総悟、終わりだ。引き分け。」
近藤の声で、我にかえったように沖田が目を見開く。そしてこくんと頷き、小さく礼をした。

土方も軽く礼をし、体育館をでる。
じわり、はりつく嫌な汗をタオルで拭った。

「なかなか強いじゃねーですか。土方さん」
沖田が後ろから言う。

「お前もな。」

鐘がなければ、負けていただろう。
いつかの近藤の言葉は、嘘ではなかった。

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