8:《あの娘は綾波レイが好き》


朝6時半。ドアを開ければすぐそこに。

「遅いでさあ、土方さん」

ジャージ姿にマフラ−に顔を半分埋めた沖田が寒そうに立っていた。

「ああ、わりぃ…昨日の朝とは大違いじゃねえか。どうしたんだよいきなり。」
土方が問えば

「俺にはこれしかねぇんです。
がむしゃらになんねーと。」
そう言ってにいっと笑う。

「…まあやる気出してくれて何よりだけど。」

土方が呟いて数秒後。
廊下にひゅうっと吹き込んだ冷たい風に押し出されるように、突然沖田が駆け出す。

「先に駐輪場についた方がジュース一本獲得でさぁ!」


「は!!?」

ふざけんじゃねえ。俺の方が圧倒的に不利じゃねえか。

「おい、総悟!!待ちやがれ!」
土方の叫びが虚しく響く。

がんがんと煩い音を立てて、階段が軋む。
早朝だということも忘れ、全力で階段を疾走した。


「俺の勝ちでさあ!!」
ぜいぜい肩で息をしながらも高らかに。沖田が勝利宣言をする。

「…てめえ、あんなの勝ちとは言わねえんだよ」
こちらも荒い息をしながら睨む。

「男は言い訳なんてしちゃいけやせんぜ?…と言う訳でポカリよろしくぅ。」

「よろしくぅじゃねえよ、なんかムカつくな。絶対奢らないからよろしくぅ。」

「ポカリとコーヒー牛乳よろしくぅ。」

「何気なく注文増やしてんじゃねえよ!!」


「…あ、土方さん!もう40分ですぜ!!」
沖田が時計を指差せば。

「なっ…やべえ!!総悟!早く乗れ!!」
絵に描いた様に焦る土方を見て笑う。

「はは、あんたといてから朝が楽しくていけねえや」


馬鹿みてぇ。自分でもそう思うくらいに。










朝練が終わり、疲れた体を癒すために屋上に向かう。
ホームルームにでていないので出席は取っていないが、一日ぐらい大丈夫だろう。と言い訳して。
すると三年の昇降口の方から見覚えのある白髪頭の姿。

「あ、沖田君じゃん」

声をかけようか迷っていたらあちらから。

「おはようございやす。…旦那、遅刻ですぜ?」

「うん、知ってる。沖田君こそ、今1時間目始まったとこなんですけど。
サボり?」

「まあ、そんなところでさぁ。」

「…入学早々サボりなんて良い根性してんなあ。まあ俺も人の事言えないけどさ。
じゃあ何。沖田君、屋上行くの?」

「ああ、そうですねぃ。」


「気をつけた方が良いよ。」

ゆるり、笑う。
しかしその笑みから冗談か否かを窺い知ることは出来ないから。沖田は少し顔を歪めて。

「それ、前も他で言われやした。」

「だろうね。」

銀時の顔が近づく。困惑したように沖田が数歩下がればそこは壁。
今度は壁に片腕をついた体勢なので、逃げ道が無い。
銀時の目を見ればその目はいつになく真剣で。

「…旦那?」

答えは無く、ただその形のまま沖田を見る。
屋上でのことが頭をよぎり、訳が分からないほど心臓が早鐘を打って、じわり、嫌な汗が滲む。

「………」

長い沈黙の後。

まるで全て冗談だったかのようににやっと笑った。

「だから、こういうことされちゃ駄目って言ってんの俺は。」



「俺だって男なんだから。」
いつもの口調でへらりと放つ。

「俺も男ですぜぃ。」
何が言いたいのか理解できなくて、小さく首をかしげた。

「うん、見れば分かる。…まあいいや。じゃあ部活でね。」
訳の分からない難題を残し、3年の校舎へと消える。

「訳わかんねえ」

廊下の壁の姿見に映る自分は、どうみても男。
確かに体格は土方たちに比べれば些か頼りなく映るが。

「あの言い方、まるで俺が女見てえじゃねぃか。」

そう呟いて、鏡の中の男を強く睨んだ。


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