ペトル・チェフ（Petr Cech 1982年5月20日生）［チェコ・サッカー選手］
プルゼニ出身。元々のポジションはストライカーであったが、周囲に才能を見いだされ、ゴールキーパーに転向。地元の小クラブ、FCヴィクトリア・プルゼニでユース時代を過ごし、1999年にFKフメル・ブルシャニへ移籍しプロデビューした。すぐさま頭角を表すと、2001年夏に移籍金70万ユーロ（約9200万円）で同国の名門・ACスパルタ・プラハへ移籍。移籍後すぐにポジションを射止めると、リーグではもちろん、UEFAチャンピオンズリーグでもスパルタ・プラハの堅守に貢献し、グループリーグで前年覇者のバイエルン・ミュンヘンを完封するなどの活躍を見せた。
2002年2月のハンガリー戦でA代表デビューを果たし、同年夏に行われたUEFA U-21欧州選手権にU-21チェコ代表として出場して優勝した。決勝ではU-21フランス代表を完封し、PK戦でもPKを2回止める活躍をみせ、大会の最優秀選手賞も受賞した。その後、活躍の場を国外に求め、同年7月9日に移籍金375万ポンド（約6億9000万円）でフランスのレンヌに加入した。ここでもレギュラーの座を手中に収めて素晴らしいパフォーマンスを披露。初年度こそ最後まで残留争いに巻き込まれて15位だったものの、2年目は9位に躍進。それ以降のレンヌは毎年1桁順位を記録しており、長年リーグの中位から下位をさまよっていたレンヌをリーグ中位の常連に押し上げたといえる。
2004年7月1日、2シーズン在籍したレンヌを離れてイングランドのチェルシーへ700万ポンド（約14億円）で移籍した。移籍当初は実績のあるカルロ・クディチーニとのポジション争いが予想されたが、EURO2004で高めた前評判も手伝ってすんなりと正GKの座に収まり、持ち前の堅実なプレーを見せて移籍1年目ながらピーター・シュマイケルが保持していた694分連続無失点のプレミアリーグ記録を更新（後にエドウィン・ファン・デル・サールに更新される）。なお、クラブもチェフと共にアーセナルが保持していた823分の連続無失点記録を更新し、この記録を1025分まで伸ばしている。移籍1年目ながらチームの半世紀ぶりとなるリーグ優勝に貢献したほか、チェコ最優秀選手賞と共にUEFA最優秀GK賞を受賞し、「世界屈指のGK」として確固たる評価を得た。
2006年、自身そしてチェコ独立後初となるW杯の出場を果たした。しかし本大会では初戦のアメリカ戦に勝利したものの3試合で4失点を喫し、グループリーグ敗退に終わった。だが、この結果は個人の失敗のみを表すようなものではなく、本人は再三に渡って好セーブを連発している。特に2戦目のガーナ戦では2失点を喫したものの、チェフの孤軍奮闘ぶりは際立っていた。前半で退場者を出し数的不利になり、シュート20本（うち枠内シュート8本）とガーナの厳しい攻めに遭いながら2失点で抑えたそのパフォーマンスは、守護神と呼ばれるに相応しいものであった。3戦目のイタリア戦でも2失点を喫したが、それはこの試合でも前半で退場者を出し数的不利になり、勝たないとグループリーグ突破が絶望的となる状況で攻撃に出た結果である。
順風満帆なキャリアを歩んでいたが、2006年10月14日のプレミアリーグ第8節・レディング戦でボールを奪おうとしたレディングのMFスティーヴン・ハントと激しく接触するアクシデントに見舞われた。病院に緊急搬送され、頭を30針縫う大手術を受けた結果、頭蓋骨陥没骨折の重症を負っていることが判明。一時は意識不明に陥ったが、その後意識は回復し一命を取り留めた。ジョゼ・モウリーニョ監督はハントの行為を厳しく非難するとともにチェフが一命を取り留めたことを「奇跡」と表現した。
復帰には最短でも1年はかかると診断され、最悪選手生命も危惧された。が、驚異的な回復力で2007年1月20日のプレミアリーグ第24節・リヴァプール戦で先発出場して復帰を果たした。衝撃の怪我から僅か3ヶ月、背番号1が再びピッチに舞い戻り、スタジアムは大歓声に包まれた。自身は「衝突した瞬間の記憶はない」と語っており、怪我の深刻さを物語っている。その後は常にラグビー用のヘッドギアを装着して試合に臨んでいる。骨折自体は完治しているが、強度はまだ完全には元に戻っていないこと、ヘッドギア装着でのプレーが定着しているなどの理由で、現在も装着し続けている。
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